電車の窓の向こうには、嫌なものを消し去ってくれる夜の鏡の世界が広がっている。
天井の蛍光灯が青白く顔を照らし出す。真っ白な光が、全てのものを露にする。顔の染み、化粧の崩れ、目の下の隈……。昼間のうちを人間関係の渦の中でもみくちゃにされた疲労が、倦怠感となって私の表情を覆う。
違う。私の顔は、こんなんじゃない。
夜の街を映し出している窓の外を見る。ガタゴトというリズムと共に流れて行く壁や光の帯の手前に見出した私の顔。夜の闇はただのガラス窓を鏡に変え、窓の向こうに、もう一つの世界を作り出す。
暗がりの中の私と向き合う私。鏡の闇の向こうでは、映して欲しくない私の顔は、夜の闇に修正をかけられ、私の望む表情だけを映し出す。
私もまだ、捨てたもんじゃない。
夜の電車の窓ガラス。私の望みどおりの実像をくれる、闇の世界の温かい鏡。
2008年09月04日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/105996397
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.seesaa.jp/tb/105996397
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック


