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2008年09月04日

 誰もいない早朝、街の電柱の根元に積まれたゴミ袋の上で、小さな黒い影が振り向く。

 鴉。

 優しい朝の光、けだるい空気の澱みに停滞した街で、強靱な爪をアスファルトに叩き付け、無数の黒い影が廃棄物の山から山へと、面倒臭そうに飛び回っている。彼らは、いつだって我が物顔で、基本的には、人間を嘲っているのだ。

 人間は欲望のおもむくまま様々なものを作り出し、それに飽きてしまう。私達はそれをゴミ呼び、袋をかぶせ、パンパンに膨らませて捨ててしまう。ゴミには、人間の欲望がそのまま記録されている。しかし鴉は、人間がもはや見向きもしなくなった記録に、生命の最も根源的な意味を見い出し、それを食する。

 鴉には、人間にはもはや見えない真実が見えている。

 だからこそ我々は彼らを追い払う。そしてまた我々は、今日もゴミを捨てるはめになる。


多摩美術大学 美術学部一般入試課題「記憶/記録」


posted by NaruseT at 12:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 美大の小論文参考作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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