喫茶店R。常に私の中で「神保町」の一部を成す、なくてはならない存在。胸騒ぎ。走りたいような気持ち。閉まったガラス戸。その向こうにはもう誰もいない。
数年前から、再開発が進んでいる地域である。事実、なくなってしまった店鋪も多数あり、代わりに新しい店舗が入っている。
しかし、それはあの街には相応しいものではない。新しい店舗のほとんどは、大資本によって店舗数を拡大する大手企業の支店だ。そんな店舗なら、どこにあっても同じだ。別に、神保町になくてはならないものではない。
どこにでもある置き換え可能なものが、どんどん置き換え不可能なものを食い潰している。私の知っている神保町は、もう、記憶の中にしかなくなってしまった。
多摩美術大学 美術学部一般入試課題「記憶/記録」


